
テーマは「南北分断」の悲劇。豪華キャストで送る社会派エンタテイメントだ。
一説によると「シュリ」以上の人気を誇っていた作品だとか。「シュリ」を見ていても思ったが、こういうテーマで映画作成が繰り返されるのは、当事国にとってこの事件がどれほど大きく、印象深いものか、また受け継いでいかなければならないものかをあらわしている様に思う。とはいえ形としてはエンターテイメント、「見やすい」ということは伝え広めるには不可欠なことで好感が持てる。いくらがんばって作っても、面白くなければ広がりませんからね・・
ちなみにタイトルのJSAとは、(特に韓国と北朝鮮との)軍事境界線付近に展開される共同警備区域、Joint Security Areaの略である。
Amazon.co.jpより
朝鮮半島を南北に隔てる板門店/共同警備区域=JSAの北朝鮮側歩哨(ほしょう)所内で、韓国側による殺人事件が発生し、韓国人の父をもつスイス軍女性将校ソフィアが捜査のため同地を訪れた。北と南、双方の意見の食い違いに彼女は大いに戸惑うが、やがて悲しくもむごい真実が画面で明らかにされていく…。
今も緊迫した関係が続く「南北の分断」をテーマにし、韓国の歴代興収記録をぬりかえた社会派エンタテインメントの大ヒット作。北と南の兵士たちが、それぞれ友情の念を抱いたことから起きてしまう惨劇。そんな皮肉をあますところなくとらえることで、民族の怒りと悲しみを浮き彫りにさせた意欲作でもある。南北の立場に挟まれ、次第になす術を失っていくヒロインは、実は事態を見守るしかない観客の代弁者でもあり、だからこそ余計につらく悲しい。(的田也寸志)

若き日のアル・パチーノ主演、実際に起こった事件を題材にした銀行強盗サスペンス(?)だ。
なんといっても面白いのはパチーノの演技。この映画は最初からラストまでほぼパチーノの独壇場で、ひたすらトークをしているのだが、客観的な鑑賞者としてみても笑える部分が多いし、それでいて変に不自然な感じはしない。一応カテゴリーわけでは「サスペンス」にしておいたが、サスペンスらしいサスペンスもなく、面白いのは繰り返しになるがパチーノの演技とそれぞれの人物の心理描写、この2点に絞られている。映画としては何の変哲もないくせ、見終わった後には妙な満足感が得られるのは、ひとえにその演技によるもの。アル・パチーノファンの皆様には必見の一策である。

評価:★★★★☆
《観終わると「詩」の世界を勉強したくなる、人間ドラマの秀作》
このタイトルは英語では「POSTMAN」、つまり「郵便配達人」だ。しがない郵便配達人が、その配達先であるときの詩人・パブロと、「詩」を通じて心を通わせていく。またマリオは恋に落ち、結婚もするが、パブロはチリに帰国できることになり・・といった人間ドラマだ。
話の内容としては普通といえば普通で、縁があって仲良くなることができた二人を中心とした心のふれあいや人間の成長を描いた作品で、また「チリからの亡命」であったり、「共産党が~」などの言葉がしょっちゅう出てくるところ、詩人がある層から嫌われているところ、マリオの最期などはかなり時代背景を感じることができたものである。最初は「詩」がキーワードときいて小難しい話なのかという印象を持っていたが、気軽に、しかし深く鑑賞する事のできるよい作品だったということができるだろう。
これを見た人は「隠喩」「詩」を無償に勉強したくなるであろう異請け合いである。
Amazon.co.jpより一部引用
イタリア、ナポリに浮かぶ小さな島。政府に追われてチリから亡命してきた世界的詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)の滞在は、島の人々のちょっとしたニュースになっていた。ネルーダに郵便を届ける配達人となった青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、ネルーダとの交流の中で、詩の世界に触れ、恋を知り、人間として目覚めていく。
故郷を追われたプライド高き詩人と、故郷の現状や自分自身にさえ無頓着な若者。まるで共通点のないふたりが詩を通して心で結び合うさまを、繊細なタッチで描いていく。ネルーダが島を去った後も、彼の消息を新聞記事で追いかけるマリオ。著名人であるネルーダにとっては短期間の小さな思い出に過ぎず、便りが来ることもない。それでもマリオはネルーダの残した録音機に、さざなみや風の音を吹き込む。出会いが人生を変え、信じようとする心が真実を生むというシンプルなメッセージを、心から信じたくなる真摯な映画だ。(茂木直美)

評価:★★★★★
《ジョン・グリシャム原作! マフィアと、検事と、司法と勇敢に闘う少年の姿を描いた隠れた名作!》
運悪く偶然にも複雑に絡み合う事件に関わることになってしまった少年は、ある議員の死体の隠し場所を知ってしまったせいで、一方でマフィアに狙われ、一方で選挙で勝つための布石としてなんとしても死体の隠し場所を知ろうとする検察側(トミー・リー・ジョーンズ)に執拗に付回される羽目になる。証言すれば命を狙われる。証言で嘘をつけば司法妨害・偽証罪でぶちこまれる。八方塞の少年は、たった1ドルで依頼をした女弁護士とともに、自分を、家族を守りながら必死に奮闘するのだが・・という、なんともシリアスな内容の映画である。
法廷サスペンスとしても一級のでき(原作もよいし)であるこの作品であるが、これに少年の家族の事情であったり、女弁護士の壮絶な過去であったり、なんとしても死体を探し出そうとする検察側の思惑であったりといった、バックグラウンドや人間ドラマも非常に面白い。ここでアメリカのかなり重要な問題である保険制度の不完備など、アメリカの社会を垣間見ることもできる。もちろん、絶対的にピンチな状況で、それぞれの魔の手をどうやってくぐりぬけていくのか、という攻防戦も見ものである。
さて、今回のラストで、日本にはない面白い司法システムがキーワード的に出てくるが、これが「証人保護プログラム」だ。以下、簡単な説明をウィキペディアから引用した。
『米連邦証人保護プログラム(れんぽうしょうにんほごぷろぐらむ、US Federal Witness Protection Program、略:WITSEC)とは、アメリカ合衆国における法廷または上下両院における証言者を(いわゆる「お礼参り」から)保護する制度である。
法廷や諮問院会で証言者を被告発者からの制裁から保護するために設けられた制度である。本制度はマフィアの「血の掟」から証言者を保護する目的で設けられた。
該当者は裁判期間中、もしくは状況により生涯にわたって保護されることとなる。その間、住所の特定されない場所に政府極秘の国家最高機密で居住する。その際の生活費や報酬などは全額が連邦政府から支給される。内通者により居所が知られないとも限らないので、パスポートや運転免許証、果ては社会保障番号まで全く新しいものが交付され完全な別人になる。なお、被保護者の中でもとりわけ、合衆国の国益に多大なる貢献をしたものは相当裕福な経済的援助を受けることもある。居住の場所はアメリカ合衆国内にとどまらず、ラテンアメリカ各国や、在外の米軍基地内、EU領内などのNATO軍の官舎等が割り当てられることも多々ある。』
簡単に言ってしまえば、危ない証言をさせられる証人を守るため、いっそのこと別人にしてしまって保護しようというなんともアメリカ的にスケールの大きい司法制度である。日本では司法取引の慣習がないので、こんなこと起こりようもないと思われるが、やはり司法社会とも言われる大国は違うなあ、とうならせられたものである。こうした様々な司法文化が垣間見ることのできるところも、グリシャム原作の作品のおいところであるなあと思う。法律家や、法律に興味がある人にとってはそういう瞬間を垣間見るとき、新しい発見へ感動し、更に様々なことを知りたいという知的好奇心をくすぐられるはずである。

評価:★★★★☆
《第26回日本アカデミー賞を総なめにした藤沢周平原作の傑作時代劇!》
いわずとしれた、山田洋二監督の最高傑作との声も多い大傑作である。時代劇とは行っても、話の筋としては結構シンプルな創りで気疲れすることなく見れる作品。時代劇と言えば、「自分の命をかける任務と、愛する女性」という葛藤が王道のパターンだが、この作品も王道過ぎるぐらい王道を地で行く作品だ。真田の演技もすばらしく、エンターテイメントとしても人間ドラマとしても一級の作品だ。同じく山田監督の時代劇「武士の一分」もシンプルかつ深みのある作品であったが、完成度はこちらの方が高いと思われる。必見の一作である。

評価:★★★★☆
《日本の成長とともに、そこに住む人も成長していく。人生って本当に面白いしドラマティックだ。》
原作は大ベストセラー、ドラマも好評の「東京タワー」だが、私は実はどっちも見たことがない。先日発表された日本アカデミー賞で作品賞を受賞したということで、おもい腰を上げて見てみよう、という気になったのだが、なかなかどうして、興味深い作品だった。
話は単純で、一人の男(原作者自身)の半生を、自分を支え続けてくれたオカンとのドラマを中心に、友人だったり、恋人だったり、オトンだったりといった面々とのやり取りを通し、成長していく姿を描くという作品だ。それを象徴するかのように、子供の頃には中途半端なできかけの東京タワーが、上京する頃には完成し、ラストには実際にそこに上るというように日本の首都のシンボルとも言うべき建物の、そして日本自身の成長が見て取れるのが印象的だ。特段変わった物語でもなく、どこにでもありそうな物語といえばそうなるし、だからこそ多くの者の心を打つ作品として仕上がったのだろうと思う。
見所はやはり感動的なラスト。これをみた大学生諸君、まだまだ現役バリバリの社会人諸君は親のありがたみを痛感し、親孝行をしたくなるに違いない。社会の厳しさに打ちひしがれている人などがみても心温まるストーリーであるに違いない。
とはいえ、やはり私は、今年の日本アカデミー賞は「それでもボクはやってない」が取るべきだったと思っている。まあ、どちらもいい作品ではあるが・・両作品見て、さまざまな人の感想を聞いてみたいものである。
Amazon.co.jpより
リリー・フランキー原作の同名ベストセラーを映画化した本作は、ドラマ版とは違って、映画ならではの細部へのこだわりや、絶妙なキャスティングに よって、原作の持ち味を存分に活かすことになった。原作者自身がモデルである主人公の「ボク」が、炭鉱町・筑豊での少年時代を経て、東京でイラストレー ター兼コラムニストそして成功。ガンに冒された「オカン」を東京に呼び寄せるという物語は、ほぼ原作どおり。映画だからといって、妙に本筋を外れなかった ことに好感が持てる。
長髪で無精ヒゲを生やしたオダギリ ジョーは、思いのほかリリー・フランキー本人に近いイメージ。さらに樹木希林のオカンの若き日を実娘の内田也哉子が演じることで、時の流れが見事に表現さ れている。そのほかキャストでは、原作にも出てくる松田美由紀の使われ方や、一瞬だけ登場する豪華ゲストも見どころ。炭鉱町のセットを始め、その後の 80~90年代のカルチャーも丁寧に映像化された。原作ファンが気になるのはクライマックスだが、オカンがガンに苦しむ姿を壮絶に描く反面、その後は過剰 な演出を避けたたことで、原作よりも、じっくり感動する人が多いかもしれない。映画として、どこにインパクトを与えるべきなのかを、監督の松岡錠司は知っ ているのだろう。(斉藤博昭)





評価:★★★★☆
《全編クライマックスで送る、オールスター・サスペンス・アクションの金字塔!》
バンテージ・ポイント(vantage point)とは「有利な見地」の意であり、8名それぞれの立場でしか見えない「視点」を寄せ集め、大統領暗殺計画の全貌を明らかにするという含意である、ということらしい。話の大筋は凄くシンプルで、わずか1~2時間の間を舞台にした、大統領暗殺の真実を追っていくサスペンス・アクションである。
まず面白いのは「8つの視点」から若干の繰り返しも含めながら真実に迫っていく、という「映画」としての構成だ。90分という短い間に、しかも8つの視点を組み込むのであるから、ひとつのストーリーにつき約10分でどんどん物語を進めていかなければならない。爆発シーンなどはさすがに何度も見せられ飽きる部分はあるが、どんどん話は進んでいくし、速い展開に緊迫感あふれる映像、要所要所にちりばめられたアクションシーンと、まさに全編クライマックスともいうべき怒涛の展開を見せてくれる。一つ一つの話が一番良いところでいったん切れて時間軸が元に戻るので、どんどん物語に引き込まれていくという演出がにくい。このテロが何のために起こったのか、という部分は(一応それらしい描写はあるものの)深く突っ込まず、「8つの視点」でありながら「大統領暗殺を追う」というひとつの部分に焦点を当てているのは成功だったと思う。一応検討してみたが、話しの筋は良く通っており、今のところボロはみつかっていないので、チャレンジャーな人は一生懸命どこかほころびがないか調べてみては。
キャストも豪華。「ラスト・キング・オブ・スコットランド」でアカデミー主演男優賞に輝いたフォレスト・ウィテカー、ベテランのデニス・クエイド、「エイリアン」で有名なシガニー・ウィーバー・・・・その他もろもろ。しかし、「オーシャンズ」シリーズのように今を輝く大スター、といったキャスティングではなく、どちらかというと熟年の実力派といった渋い配置になっているところがまた好感が持てる。ここ最近の映画では時間も短く見所たくさんの作品なので、オススメの一作です。
おまけですが、エンド・クレジットを見ているとラストに英語で「この物語はフィクションです。実際の人物、・・・・・・・・」というくだりがつけられていました。やっぱ大統領暗殺とかこのあたりのものはこの文句を入れておかないといけないのですね。「レーガンから大統領演説は全部替え玉だ」なんて結構怪しい話もありましたし・・そういった意味ではエンド・クレジットもなかなか面白かったですね。
ストーリー:オールシネマより一部引用
テロ撲滅の国際サミットが 開催されるスペインのサラマンカ。大観衆を集めた広場では、アシュトン米大統領によるスピーチが行なわれようとしていた。だが、演説が始まろうとした矢 先、一発の銃声が轟き、大統領が狙撃されてしまう。続いて爆発も発生し、一瞬にして広場が混乱状態に陥る中、シークレット・サービスのトーマスとケントは 狙撃犯の捜索に奔走する。そして、市長を護衛していた地元刑事エンリケの証言や、観光客のハワードが収めていたビデオカメラの映像などから、複数の容疑者 が浮上するのだが・・
評価:★★★★☆
《セクハラ訴訟、真実の物語。女性は何を思って働いているのか-》
原題は「NORTH COUNTRY」。北のほうで起こった鉱山でのセクハラ問題について、女性側の勝訴によりその影響が広がっていったことからつけられたタイトルだ。実話に基づくこのストーリーはなかなかのヘビー級で、その重さに女性も男性も結構な心構えで見ないととても目をそむけずにはいられない内容が描写される。
数々の偏見や差別と戦いながら、それを抗議することもできず、泣き寝入りするしかなかった一昔前の女性の厳しい地位を描き、それが裁判で二次被害とも言うべくして、傷が抉り出されていく。仲間だと思っていた女性社員にも疎まれ、追い詰められながらも単身で勇気を振り絞って闘っていく主人公。ラストのクラスアクションの提起までの過程は感動的なものがある。
話は淡々と、決して軽くない話が展開される。しかし、女性も男性も関係なく万人に一度見てほしい良作である。不満を言えば、実際に裁判で弁を戦わせるシーンが少なかったことであるか。
ストーリー紹介:Amazon.co.jpより
夫の暴力から逃れ、父親の違う子供を2人連れて、故郷の北ミネソタの街に帰ってきたジョージー。彼女は、周囲の冷たい視線にさらされながらも、子供のために男たちに混じって鉱山で働く道を選ぶ。しかし、鉱山は男と職場とされ、そこに入り込んできた女性に対する仕打ちは、身も凍るほどひどいものだった…。
シャーリーズ・セロンがセクハラに猛然と立ち向かっていくヒロインを演じる。不運な人生を歩んできた女性が、何度もくじけそうになりながらも、壁を乗り越えようと必死に闘う姿が胸を打つ。リーダーシップをとるような強い女じゃない、欠点も多く持ったヒロインだからこそ、立ち上がる姿が共感を呼ぶのだ。また父親や子供との絆、鉱山で働く友人たちとの関係などもしっかり描かれ、家族愛は涙も誘う。ヒロインを情感溢れる演技で魅了したシャーリーズ・セロン。『モンスター』を彷彿させる汚れ役に果敢に挑戦した女優魂は注目。監督は『クジラ島の少女』のニキ・カーロ、共演はフランシス・マクドーマンド、ショーン・ビーン。(斎藤 香)
評価:★★★★☆
《「裁判」とはいったい、なんのためにあるのだろうか?》
このお話、ある女性判事補殺害事件を担当することになったハリソン・フォードが、昔の不倫相手であることが明るみに出て逆に殺人犯として起訴され、追い詰められていくという法廷サスペンスだ。妻と真実の間で揺れ動くハリソンの演技が印象的。
しかし、この映画選挙を控えた上司によってハリソンが振り回されているという部分が多きい。もちろんそんな関係のないところでとばっちりをくったハリソンはたまらないだろうが、「真実を追い求め、犯罪者に罰を下す」はずの裁判が、「誰かに犯人になってもらう」ための裁判にもなりうるという「制度である」裁判の危うさもそこでは描かれていた。真犯人は、まあ見ていればわかるので割愛するが、「裁判」に翻弄される主人公の様子をみせつけられることで、刑事裁判とは何か、「疑わしきは被告人の利益に」という原則とは何なのか、といったことについて考えさせられる一作だ。ポイントは「推定」無罪であること。このタイトルは何を意味するのか・・各自で考えていただきたいものである。
去年話題となった「それでもボクはやってない」でも、「裁判というのは真実をみつけだすものではなく、とりあえず有罪か無罪かを決定するためのものなのだ」という問題提起があったが、裁判員制度の開始を控えた今、こうした映画を見ることで刑事裁判のあり方について考えることは、「法の支配」を徹底させるという司法制度改革の理念を実現するためにとても重要なことではないかと思う。
評価:★★★☆☆
《被害者と人生を入れ替え、次のターゲットを狙う異色の猟奇殺人事件を追うミステリ!》
テイキング・ライブスというのは「人生をのっとる男」といったところだろうか。自分の兄を殺し成り代わることから始まり、次々と殺人を犯してはその被害者に成り代わるといった連続殺人事件が発生。捜査が難しいとふんだ警察はFBIからプロファイリングのプロフェッショナルイリアナ(アンジェリーナ・ジョリー)を呼び寄せ、合同捜査を開始することになる。そこに、犯行を目撃したという一人の男が現れるが・・という内容。
ここで出てくる「プロファイリング」だが、これは簡単に言えば、現場に残された手がかりなどから「犯人像」を先に推測し、そこから犯人を探し出していくというアプローチをとる捜査方法だ。普通の捜査は物的証拠・人的証拠から地道に全体像を明らかにしていくという手法をとるが、これは逆に全体像を先に検討するという点でまったく逆の手法をとることになる。ある種有効な方法ではあるが、先入観が先行したり、不確実性が高いなどの要素があるため、いまだ主流にはなっていない捜査方法だが、今回の主人公・アンジョリはこのプロフェッショナルという設定になっている。「プロファイリング」といえば一昔前にはやった漫画「サイコメトラーEIJI」にもこのプロファイリングを多用して事件を追う女刑事がでてくる。この漫画はプロファイリングに加え、主人公エイジのサイコメトリーによって事件を解決していく、といったSF刑事サスペンス(?)であるが、これもなかなか面白かった。漫画や映画の題材としてはこの「プロファイリング」というものはなかなか面白いものだと思う。
さらにこの映画では、タイトルにもなっている「成り代わり犯」を追うサスペンスであるという点も面白い。多少話は飛ぶが、先日の最高裁判決で住基ネットに合憲の判断が出た。「国民背番号」構想は裁判所のお墨付きをもらったわけであるが、これは訴訟でも争われたようにプライバシーの侵害という現代的な問題を含んでいる。このデータが外部からハッキングされれば、他人になりかわることなんて簡単じゃないのか。この映画を観ていて、「人が成り代わることの恐怖」という点で現代的な問題を見せ付けられて用に感じた。
・ ・・・もちろん、わたしの勝手な解釈だが。
しかし、そうした部分を差し引くと、サスペンスとしてはイマイチかな、という印象。イーサン・ホークは最初から胡散臭いし、ラストも確かに「ナットク」という部分はあるものの、あっけないといえばあっけない・・イーサンとアンジェリの好意を持ち合う過程も結構強引な気がするし・・
そこそこ気軽に見れて、いろいろと現代的な問題点を発見するための素材、ぐらいの勝手な使い方をするぐらいで丁度いいかもしれない。
評価:★★★★☆
《これぞデ・ニーロ・アプローチ!鍛え上げられた体、徹底した役作りを堪能せよ!!》
実在したプロボクサー、「ブロンクスの怒れる牡牛」(レイジング・ブル)の異名を持つジェイク・ラモッタの半生の物語だ。今回の見所はなんと言ってもデ・ニーロの徹底した役作り。ボクサーとしてのリアリズムを追求し、自ら大幅な減量と体作りを行う。自分本位な男であるラモッタの激情的な様子を怖いぐらいの迫真の演技でみせつけてくれる。主演男優賞を獲得したのも納得の名演技であり、一見の価値のある作品だ。
監督のスコッセシとデ・ニーロは名作「タクシー・ドライバー」につづくタッグを組みまたも名作を世に生み出した。スコッセシ得意のマフィア・ギャングものとは一見遠いようにも見えるが、リングの上はある意味ギャングの世界にも負けず劣らずの戦場であること、男の生き様をアツくカメラに収めたことなどから、やはりスコッセシらしい・スコッセシにしか撮れない作品だといえるだろう。今回作風として面白いのは全編モノクロタッチであるということ。完全なモノクロではないが、できる限り白と黒の世界で作品を撮ることにより、逆にラモッタの生き方が際立って見えるというものである。
内容としては伝記的作品なので万人ウケするとは限らないが、男なら見るべき!ラモッタは自分勝手すぎやしないかい?!とかいう突っ込みもあるだろうが、そのあたりも含め「男のドラマ」である。
<ストーリー>amazon.comより
プロ・ボクシング元ミドル級チャンピオンで、"ブロンクスの怒れる牡牛(レイジング・ブル)"の異名をとったジェイク・ラモッタ。スラム街から這い上がり、不屈の闘魂で王座に君臨した栄光と破滅の半生とは…?
<ポイント>
◎1980年度アカデミー賞2部門受賞(主演男優賞[ロバート・デ・ニーロ]/編集賞)




評価:★★★★★ 超オススメ!!!!
《1960年代のN.Y-
タクシーの運転手からのし上がった男、フランク・ルーカス。
警察の悪習を打ち破ったリッキー・ロバーツ。
今、二人のアツイ物語が幕を開ける!!!!!》
楽しみにしていた、アメリカン・ギャングスターをやっとのことで劇場で鑑賞してきました。いや、大満足!!期待以上の出来で、ここ最近の映画ではNo.1、スコット監督のベスト作ではないでしょうか。個人的には超オススメです。
舞台は1960~1970年代のN.Y。運転手だったフランクが麻薬王としてのし上がる様、仕事一筋の刑事リッキーが、司法試験の勉強をしながらも警察の悪習に反発し、見事フランクを逮捕し警察の悪習を打ち破る様を描いている伝記的作品だ。クライム・サスペンスの一種だが、昨年のアカデミー作品「ディパーテッド」などともまた少し違っており、伝記的・ドキュメンタリー的な要素も併せ持ち、アクションとしても楽しめる、一粒で何度もおいしい骨太の作品である。
この作品の見所はなんといっても2大スターの共演である。特に、麻薬王フランク・ルーカスを演じるデンゼル・ワシントンはカリスマ的にかっこよく、ラストで追い詰められる部分含め終始冷静沈着、身振りそぶりから家族を愛する姿勢まで何もかもがかっこいい。対する刑事リッキー(ラッセル・クロウ)は仕事一筋で家庭を顧みず、妻にも息子にも愛想をつかされながら、仕事にだけは愚直に自分の責務を果たすことをやめない男。色々な苦労を背負っているのだろう、どことなく力ないようにみえるが、仕事にもやす情熱・誠実さは人一倍。そしてその執念で、アメリカを腐敗させている麻薬の大元締めを追い詰めていく。話の中でも二人は個性的で、対照的な魅力をもっており、俳優としても超一流の二人がそろっている。「トレーニング・デイ」で悪徳麻薬取締官を怪演し、見事主演男優賞に輝いたデンゼル・ワシントンに、「グラディエーター」で主演男優賞受賞、翌年の「ビューティフル・マインド」で主演男優賞ノミネートと、二年連続の快挙を成し遂げた大俳優だ。ラッセル・クロウは前述「グラディエーター」をはじめ「プロヴァンスの贈り物」など多くの作品でリドリー・スコット監督とコンビを組んでおり、本作もこれまでの二人の作品の総仕上げとも言ってよいできばえだった。
そして、この作品の魅力はそれだけで終わらない。いわゆるギャングものは、アメリカンドリームの体言ともいえ、男なら誰でも憧れる魅力的なジャンルである。加えて本作は実話を基にして作られているので、その部分も非常にポイントが高い。
小泉純一郎元首相は映画好きで有名だが、数年前に話題となり、アカデミーでも10部門ノミネートに輝いた(残念ながら本受賞はひとつもできなかったが)スコッセシ監督の意欲作「ギャング・オブ・ニューヨーク」をベタぼめし、「感動した」といっていたのは記憶に新しい。これは南北戦争を背景に、時代を感じさせるギャングの姿を描いていたが、本作はより現代に近づき、わずか50年足らず前のN.Yを舞台にしており、背景もニクソン大統領、「ベトナム戦争」「蒋介石」・・・・と、時代を感じさせる描写がいくつも出てきて非常に面白い。是非、本作を見る場合は、世界史および現代社会の勉強をしてから見てみることをオススメする。もちろん、後から調べてみても面白いだろう。(私は後から色々調べてみた。)
さて、ここからは内容に入っていくが、ただの運転手だったフランクは、バンピー・ジョンソンのそばで15年ほど一緒に仕事をしており、その中で多くのものを学んできた。死に際にも一緒だった彼は、バンピーと死に際で交わした会話をヒントとして、新たな麻薬の販売を始めることにした。アジア製の安い機械を大量に輸入して、それをアメリカ国内で売りさばきボロもうけしている電化製品店を模倣し、麻薬を仲介者を通さず直接に安く・大量に購入した上で通常の半額の価格で通常の倍以上の品質を誇るヤクを売りさばいたのである。これだけ聞くと、誰でも思い浮かびそうな簡単なことに見えるが、ヤクを外国からそんなに簡単に、しかも大量に輸入できるわけもない。それゆえ、これまでそんなことは自殺行為として誰一人やってこなかったのである。しかし、フランクはやりとげた!!
いとこと「ベトナム戦争」を利用し、戦闘機などを利用し密輸をする。なんともリスキーで大胆な方法を用い、フランクはみるみるうちにギャングとしてのし上がっていく。一方、リッキー・ロバーツは麻薬対策の特別捜査チームの指揮をとることを依頼され、愚直に捜査を進め、ついに暗黒外のカリスマ・フランクに行きつく・・二人の決着はいかに?!といった内容である。
とはいっても、二人が直接退治するのはラスト20分程度だ。それまでは二つのストーリーが同時進行し、ラストでそれぞれが一本の物語になる。それなのに「一本の映画」として不自然さも感じさせず、無理なく見ることができたのは、さすがといったところである。このやり方はむしろよかったというべきだろう。「みてくれ~!!」的なアクションではないが、静の中にも動がある、といった感じの、骨太なアクションがつめられており、特にラストではリッチーがフランクと悪徳警官を追い詰めていく様がスリリングに描かれていてまったく退屈しない。本当によくできた作品だった。
とはいえ、150分の長編であるし、ギャングものというジャンルも、実話という縛りも、監督の色としても重めのつくりなので、見終わった後には静かな興奮と同時にずっしりとした疲れが襲ってきた。人によってどう感じるかは様々だが、時間以上に長く感じられる物語であるので見るときはしっかりした心構えで、腰をすえて、どっしり構えてみていただきたい。
それにしても、ラストで飛行機を解体してひっぺがし、麻薬を探すシーンは、ジーン・ハックマン主演の名作「フレンチ・コネクション」を髣髴とさせる。こちらも私の大好きな刑事ドラマなのであるが、ポパイ(ジーン・ハックマン)が麻薬王を追い詰めていくシーンを意識したことは間違いない。と私は踏んでいる。劇中にも二度ほど「フレンチ・コネクション」という言葉が出てきており、このあたりも調べて映画の見識を広げていくと面白いであろう。
ストーリー紹介:以下オールシネマより一部引用
2大オスカー俳優デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウが巨匠リドリー・スコットのメガフォンのもとで相対する実録犯罪サスペンス。1970年代のニューヨークを主な舞台に、独自の麻薬ビジネスで暗黒街に台頭していく男と、警官としての誠実さを武器に執拗な捜査で迫る刑事との熾烈な駆け引きをスリリングに描く。 1968年、ニューヨーク。黒人ギャングのボス、バンピーの右腕として仕えてきたフランク・ルーカス。彼はバンピー亡き後、ボスの座を引き継ぎ、自らの帝国を築き上げようと決意。そして、東南アジアから純度100パーセントのヘロインを直接仕入れる独自ルートを開拓し、それらを“ブルー・マジック”のブランド名で市場へ売りさばくことに成功したことから、フランクは瞬く間に麻薬王として君臨していく。一方、ニュージャージーの警察に所属する刑事リッチー・ロバーツ。彼は、警官の汚職がまかり通っていたこの時代に潔癖な仕事を貫いていたため、周囲から疎まれ孤立していた。また私生活では元妻と養育権で係争する傍ら、司法の道を目指している。そんな彼はある時、検察官からエセックス郡麻薬捜査班のチーフに抜擢される。やがて大衆に蔓延するブルー・マジックの捜査を進めるうち、フランクの存在に辿り着くリッチーだが…。
評価:★★★★☆
《生きているのは、大人だけですか。》
まず、印象的なのは、上のキャッチコピーだ。ボクは今大人と子供のマージナルな位置にいるということができると思うが、その中間地点のボクからしても、このコピーは印象的。大人は大人で、一生懸命生きている。しかし、こどももこどもなりに一生懸命生きているんだ。じゃあ、自分はどう生きるのか・・??そんなことを感じさせる。たった一行の、それでいて力強い、よいキャッチコピーだと思う。
話の内容としては、実際の「こども置き去り」を基にしたドキュメンタリー・タッチの人間模様を描いたドラマである。挿入歌や音楽もほとんどなく、味気ないといえば味気ないが、そのひたすら淡々とえがかれるこどもたちの日常に、逆に「命」の輝きというかなんというか・・があるような気がして、知らず知らずと引き込まれてしまっていた。150分弱と少々長いが、そんなことはあまり気にせずに見れるだろう。
まず、冒頭でトランクケースから子供がでてくるシーンに驚かされる。私はあるきっかけでこのDVDを見てみようと思ったのだが、特に予備知識も何もいれずに作品をみだしたので、最初は色々と戸惑いを隠せなかった。当時新聞を賑わわせたといわれる(もちろん私にはそのころの記憶などあるはずもない)この事件、初めてニュースを見た人もボクと同じような気持ちだったのかな、と想像してしまった。
また、この作品は子供の視点からこどもが力強く(ときには非行もするが)生きていく様に焦点を当てて描かれているが、角度を変えると「親のあり方」についても考えさせられる。まあ、あえて色々触れてはいないのだろうが、冒頭で少ししか顔を出さないお母さん、その言葉一つ一つが(正しいかどうかではなく、)人間として考えさせられた。こうした映画を通して、様々考えをめぐらしてほしい。ラストも印象的で、重い作品ではあるが是非一度見てもらいたい作品である。
Amazon.co.jpより
『ワンダフルライフ』『ディスタンス』の是枝裕和による、劇場用長編第4作。1988年に東京で実際に起きた「子ども置き去り事件」をモチーフにし、母親に置き去りにされた4人の子どもたちが、彼らだけの生活を続ける約1年を描いている。撮影にも1年以上をかけた入魂の一作だ。
撮影時、子どもたちに台本は渡されず、監督のその場の指示で演技させたという。そんな独特の演出スタイルによって生み出された、生々しくもみずみずしい空気感が素晴らしい。彼らの感情が、頭を介してではなく心に直に入ってくるような不思議な感覚を覚える。そんなセミ・ドキュメンタリー的手法の一方でドラマとしての求心力を失うことがないあたりも監督の力量を感じるところだ。
カンヌ映画祭において、最優秀男優賞を史上最年少で受賞した柳楽優弥をはじめ、子どもたち全員の存在感が白眉。母親を演じたYOUら大人のキャストも見事にその世界に寄り添っている。(安川正吾)
評価:★★☆☆☆
《お宝島で宝探し!トレジャーハンターに海賊に、もうてんわやんわ!》
今回のコナン一行は、ある島に旅行に来ていたところトレジャーハンターのいざこざに巻き込まれる、といった内容。そして今回の特徴は「謎解き」は色々あるが、犯人らしい犯人ってのが出てこない。指名手配犯は物語中盤前には勝手にわかってしまうし、(一応銃を撃ってはいるものの)、ラストで出てくる人物も想定の範囲内。それに特に「追い詰める」ような話の流れではない。何がいいたいかというとこの劇場版は、TV版をさらに昇華させた推理アニメではなく、むしろ番外編のアドベンチャー作品的な要素が強い、ということだ。もしあなたが本格的な推理漫画・アニメの要素を求めるのであれば、原作漫画の方がよっぽどできはいいだろう。もっとも、どの作品も純粋に「話」の質だけで比べると、ほとんどの作品は90分の縛りに負けて、原作には勝てないと思っているが・・もともと原作も無理な設定とかご都合主義は多いから(ファンの方失礼!)そのあたりは気にしないというのが正しい見方というものだ。
ところで、今回興味深いのは、キーワードとして「トレジャーハンター」「海賊船」というのが上がっているということだ。これは勝手な想像だが、さて11作目ともなるとネタもつきるであろうし、かといって手も抜きたくない。どんなネタならうけるか??・・その結論として、ヒット作品にならっていけば間違いないだろう、と考えたのだろう。何かといえば、「海賊船」といえばいまや誰でも知っているヒット作「パイレーツ・オブ・カリビアン」にならったもので、「トレジャーハンター」は昨年12月に2作目が公開された、ベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)が活躍するアクションアドベンチャー「ナショナルトレジャー」からヒントを得たのではないか。最初に断ったとおり、これは勝手な想像だが、あながち間違いでもないだろうと思う。どうだろう。
前置きはこれぐらいにして、作品の中身だが、地震の起こるひとつのパターンなどトリビア的なネタも面白く、こまごました部分は結構面白かった。全体的に、ラスボス的な存在がいなかったのもあり、凶悪犯に蘭と園子がさらわれたと言うのに緊張感もあまり感じられなかった。繰り返しになるが、この作品は、(言葉の問題かもしれないが)「推理」ではなく「謎解き」と「冒険」を楽しむ、というのが正しい見方であろうと思う。
Amazon.co.jpより
今度の謎は南の島の海賊の財宝!「名探偵コナン」11作目となる劇場版映画。今回、コナン君達が訪れたのは、かつて海賊が島のどこかに隠したといわれる宝をめぐり、町おこしを仕掛けている南の島。そこは、子供達にとっては巨大ななぞなぞテーマパーク。オリエンテーリング風に、クイズを解きながら、宝を探していると、いつしか殺人事件にまきこまれてしまう……。ストーリー本編に絡まない、ちょっとしたクイズが物語にあちこち散りばめられているため、ただお話を追うだけでなく、クイズを解く楽しみも味わえる、1粒で2度美味しい展開。さらに、水着姿で蘭ちゃんと園子が登場! 頭を悩ませるだけでなく、目も楽しませてくれるのだ。今回は「犯人を追いつめる推理モノ」ではなく、エンタテインメントの割合が大きい。次々と起きるサスペンスを知恵と勇気で乗り越える「アドベンチャー」ものとして、肩の力を抜いて楽しみたい。

評価:★★★★☆
《これは事故か、殺人か。手術室という小さな密室で展開されるミステリ!》
現役の医者でありながら作家という、海堂尊(たける)原作による、ミステリー作品だ。私はこの原作を読んでいないため、あまり偉そうなことを書くと原作ファンにたたかれてしまいそうだが、純粋に「映画ファン」として感想を書いてみたい。
まず、予備知識。ボクもこの映画ではじめて「バチスタ手術」なるものがどういうものか知ったのであるが、結構勉強になった。バチスタ手術はいわゆる拡張型心筋症に対処するための難しい手術方法だ。以下、簡単に説明すると次のようになると思われる(僕は医学に通じていないので、間違いがあればご指摘お願いします。)。
心臓病でなくなる患者はまだまだ多いが、心臓が弱くなると、心臓の筋肉(心筋)が弱くなり、相対的に中の圧力が上がって、心臓が膨張する。すると、心臓がパンパンになって、うまく縮めなくなるのだ。心臓は血液を全身に送るポンプのようなものだから、縮まなくなると血液を送り出しにくくなる。すると心不全など、いつぽっくりいってもおかしくないような状態になる、というわけである。これが拡張型心筋症である。
従来、これに対しては心臓の筋肉をもっとつけてやることで、血液を無理やり送り出せるように力をつけてやろう、というように対処していた。しかし、ブラジル人医師のバチスタさんは、逆に心臓の一部を切り取り、膨張した心臓を小さくすることでこうした事態に対処しようとしたのである。心臓から筋肉をもぎ取ってしまうので、これまでとは180度違うやり方だ。もう少し説明を加えると、パンパンの風船はなかなかへこまない(力入れすぎると割れてしまう)が、空気のはあまり入っていない風船は簡単にへこむ。ここに目をつけ、心臓の血液循環機能を回復させようとしたのである。当初、今までと逆の発想の手術で、いったん心臓を止めて心臓の一部を切り取った人間が、手術が終わったらピンピン元気になって歩き出すのだから、当時の人々はびっくり仰天だったに違いない。このバチスタ手術は当初注目を集めていたが、その難易度の高さから次第に敬遠されるようになっていった。
面白いのはこの「バチスタ手術」をテーマに、「ミステリ」という娯楽にしてしまった点だ。医者の作家ならではだが、やはり医者として「医療問題に目を向けてもらいたい」という意識もあったのだろう。実際、私はそちらは畑違いだが、今回色々勉強になったし、興味もわいた。こうした作品は是非多く作ってもらいものである。医学関係者も、そうでない方も、エンターテイメントの中に「人の生死」という重要な問いについて考えるよい機会、になればと思う。
さて、話の中身であるが、良くも悪くも「映画として」しっかり作ってあったと思う。原作では竹内の役は男らしい。しかし、阿部寛の怪演にも劣らない役作りで臨んでおり、原作ファンでもある程度安心して見れたのではないだろうか。特に前半は、重い題を扱っている割には結構ゆる~い感じで進んでおり、このあたりに「映画として」のつくりを感じる。コメディでもないのに笑えるシーンも多く、それなりに楽しめる。主演二人を見るために来た人もいることだろうから、その人たちへのサービスも含めた、といったところか。そして原作は「このミステリはすごい!」に選ばれるほどのミステリであるのに、そこまで難解さも感じさせることなく、軽快なつくりでデートムービーとしてもたのしめるようになっている。逆に言えば、「ミステリ」としては期待していたほどはたいしたことはない。説明足らずな部分もあり多少強引か、と思われる部分もあったが、まあ2時間半の長編でもそれほど退屈しなかったので、これはこれでいいのではないか。
本格的なミステリだけを期待していたような人にとっては、ガッカリする部分はあるかもしれないが・・後、個人的に気になったのは、白鳥(阿部寛)のむちゃくちゃな発言にも、特になんの突っ込みもなかった部分は「いいのか?」という感じでした。殺人者相手に「君のおかげで病院の管理体制を強化する法律が通りやすくなった。ありがとう」はないだろ~(×_×)
オチも少しあっけなかった部分はあり、本で読むと「おお~!!」ってなるんだろうなあと思った部分も多かったというのが正直なところ。それでも「映画」としての選択としては間違ってなかった、といえるでしょうか?本格的にミステリを楽しみたければ原作を読んでみるのがよいかもしれない。
まとめとしては、(読んでないが)原作には原作、映画には映画のよい部分があるのではないか、抽象的だがそのような映画だ。好き嫌いとかは分かれるかもしれないが、個人的にはオススメできるといっておこう。
ところで、今回は医学部の友人と映画を見に行ったのだが、これは正解だった。色々教えてもらえたし、「習ったところばかり出ててかなり面白かった」と言っていたので、知識がある人が見に行けば面白さも一塩上であろう。また、その友人がパンフを購入していたので見せてもらったが、用語集なども載っていたので、是非購入してよんでもらえると見識も深まって一石二鳥であろう、と思った。
作品紹介(オールシネマより一部引用)
現役医師でもある海堂尊による『このミステリーがすごい!』大賞受賞の同名ベストセラーを映画化した医療ミステリー。難易度の高い心臓手術であるバチスタ手術専門の精鋭集団“チーム・バチスタ”に連続して起こった術中死の真相を、竹内結子扮する門外漢の心療内科医師と阿部寛扮するキレモノ役人がチグハグな迷コンビとなり追及していくさまを軽快なテンポでリアリスティックに描く。監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」の中村義洋。
拡張型心筋症に対する手術で成功率60%といわれる高難度のバチスタ手術。東城大学病院では、天才外科医・桐生をリーダーとする7人体制の専門集団“チーム・バチスタ”を結成、26連勝という驚異的な成功を記録する。だが突如として、3例立て続けに術中死が発生。たまたま不運な事故が続いたのか、あるいは医療ミスか、はたまた故意か? 病院側はことを荒立てずに原因を見極めようと、日陰の存在である心療内科医の田口に内部調査を命じる。渋々引き受るハメになった田口だったが、外科の素人には荷が重すぎたのか真相解明には至らず確信の持てぬまま「単なる事故」と結論づけようとする。するとそこへ、厚生労働省の破天荒なキレモノ役人、白鳥が現われ、報告書を一刀両断し、事件を殺人と決めつけるや、困惑する田口を引き連れ強引な再調査に乗り出すのだった。

評価:★★★☆☆
《ゾンビが凄い速さで噛み付いてくる、古典的終末ホラーの現代的佳作》
B級ホラーで定番のモノといえば、こわ~いゾンビが人間に襲い掛かってくる、という設定の映画だ。最近でも「アイ・アム・レジェンド」「28週間後・・・」と、ホラーものはいつの時代も映画のネタとして使用され、それだけ見るものをたのしませてくれる要素もあるのだろう。個人的には内容がないもの、こわいものは苦手なので、その世界観や恐怖だけを2時間観続けるのは結構きついんですがね・・・オカルト的な人気作品も多いジャンルだし、最近は「バイオハザード」のようにスーパーヒロインの要素やアクション要素を織り交ぜたエンターテイメントも多く作られており、何がそれだけ人をひきつけるのかを考えるのはなかなか面白いかもしれませんね。
さて、作品についてですが、古典的なゾンビ像は「墓から土を破って現れ、ノロノロ近寄ってくる」、そんなイメージだと思います。しかし、この作品ではゾンビが素早い素早い!また、噛まれたら死んだ後ゾンビになる・・そんなの生きていても地獄、死んでいても地獄、なんとも恐ろしい設定ではないですか。劇中では生まれた子供もゾンビに・・ネタや設定は使い古しですが(リメイクなので当たり前といえば当たり前ですね)その「観せ方」はなかなか良かったとお思います。この手の映画にはよくある「政府に見捨てられた・・」的なくだりもなく、そのあたりの皮肉・批判なしにただただ逃げ惑う人々の様子を描いていたのは好評価。こういう映画でそういうくだりを入れると安っぽくなってしまっていけませんからね。個人的な感想ですが。
総じて、ホラーが苦手でなければ、何も考えずにさらっと見れる作品。ゾンビ系好きな人は是非。
Amazon.co.jpより
ジョージ・A・ロメロ監督の“リビング・デッド・トリロジー”の第2作であり、恐怖映画の歴史的傑作「ゾンビ」を、CM出身の新鋭ザック・スナイ ダーが監督したアレンジ・リメイク・バージョン。オリジナル版の隠し味だった文明批評的なニュアンスはなりを潜めたが、『ドーン・オブ・ザ・デッド』はホ ラー映画としてのおどおどろしさや生理的嫌悪感を増長させる演出ではなく、時にユーモアを交えながら、極限状況に陥った主人公たちのサバイバルと、終末へ と向かう地球の姿をサスペンスフルに描いている。
主役は『死ぬまでにしたい10のこと』のサラ・ポーリーで、オリジナル版をこよなく愛するという彼女が、強い意志を持ったヒロインを的確に演じるこ とで、この作品が描く“現実的な恐怖”の輪郭がより明確になった。オリジナル版のスタッフがちらと顔を見せているあたりは、マニアへのサービスか。(斉藤 守彦)
評価:★★★☆☆
《水族館でも見ることのできない、海の神秘を堪能せよ!》
なかなか見ることのできない貴重な映像を集め、海の神秘を語る。美しい映像満載で、その点ではかなり満足度の高い作品。
しかし、反面映画としては・・意図的にであるにしても、説明は少なく、色々考えながら見ないといけないし、ビジュアルだけ楽しむにしても90分続けてみるのは疲れる。それほどきばらず、単純に映像美や海の神秘を楽しむのが賢い見方。特に「自然を大事に~」とか、そういう主張が入っていない部分が良くも悪くも、見やすかったり、いささか退屈だったりする。
しかし、いずれにしても7年のときを費やしてとっただけはあって、映像はたいしたもの。いわゆるCGや特撮になれてしまっている私たちの世代には、たまにこういうのをみるのはいい刺激になるかもしれない。最新作「アース」も絶好調で公開されており、そちらもチェックしたいもの。
Amazon.co.jpより
地球の表面積の7割を占める海の中やその周辺で生きる生物と、多様な表情を見せる海そのものを被写体として構成されたドキュメンタリー作品。制作に7年を費やし、ロケ地は実に200カ所を数えた、壮大なスケールの映像スペクタクルだ。
マイワシ、コウテイペンギン、シャチ、シロナガスクジラ…。数々の生物が懸命に生きる姿は、時に微笑ましく、時にショッキングで、時に感傷的。作品は擬人化などの手法には頼らず、冷静な観察者の視点をとり続けながらも、巧みな編集でドラマ性を紡ぎ出していく。
制約の多い状況で撮影されているであるはずなのに、映像がどこを取っても美しいのにも感心する。深海の生物たちの姿も圧巻。まるでSF映画のクリーチャーのようなこんな生物が現実に存在しているなんて、と驚くことだろう。“自然”の偉大さに改めて気づかされる、発見に満ちた傑作だ。(安川正吾)
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これから見た映画を書き留めていこうと思ってブログを立ち上げてみました。基本的な知識も補充できるようになっているので、予習・復習にも役に立つと思います。音楽・映画が大好きな大学生です。どうぞよろしくお願いします!m(_ _)m
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《オスカー像》

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